研究紹介


非アルコール性脂肪肝炎 (NASH)

 脂肪肝といえば、アルコールの多飲によるアルコール性脂肪肝が以前から知られていますが、中には飲酒量が乏しい、あるいは無いにも関わらず脂肪肝となる人もいます。この病態を非アルコール性脂肪性肝疾患 (NAFLD) といい、NAFLDはさらに非アルコール性脂肪肝 (NAFL:脂肪肝のみ) と非アルコール性脂肪肝炎 (NASH:脂肪肝に肝臓の線維化が加わった病態) に細分されます。

 このNAFLD/NASHの発症には、肥満やストレス、生活習慣の乱れなど、さまざまな要因が関与していると言われており、現在の罹患者は約4人に1人と推算されています。さらにNASHは、10年後には10~20%が肝硬変や肝がんに移行すること、また心血管疾患の発症率や死亡率が2倍以上に上昇すること、サルコペニアも併発し予後不良となることなどが報告されており、世界的にも非常に重要視されている疾患です。

 しかし、NAFLD/NASHを発症する原因にはまだまだ未解明の機序があると指摘されており、治療薬も開発されていません。これら解決すべき課題点や他臓器疾患との関係について、疾患モデル動物 (SHRSP5/Dmcrラット) を用いて、生理学・病理学・生化学など多面的な解析を行いながら研究を実施しています。特に、NASHと心血管疾患の関係については、博士前期課程・後期課程時の指導教員でもある、分子病態・循環生理学講座の渡辺彰吾准教授と、継続して共同で研究を行っています。


サルコペニア (Sarcopenia)

 サルコペニアは、骨格筋が萎縮し、筋力/身体機能の低下を伴う疾患で、健康寿命を阻む要素として非常に注目されています。この疾患は元々、加齢に伴って発症するものと定義されていました。しかし近年になり、生活習慣病や慢性疾患もサルコペニアの発症や進行に関与していると指摘されるようになり、加齢以外の要素による病態も注目されています。

 サルコペニアを併発する疾患として、NAFLD/NASHも報告されており、併発すると予後不良になることが指摘されています。しかし、その併発するメカニズムに関しては不明な点が多く残されています。また、サルコペニア自体の有効な治療方法は、現時点では報告されていません。

 NAFLD/NASHの研究経験を活かしつつ、健康寿命に関わるこの重要疾患、特に疾患由来のサルコペニアについて追究しています。